昨夜、読み終えた本。
『山と友 Ⅲ 第一巻 山 東京大学運動会スキー山岳部百周年記念誌』(東京大学山の会編)
(何年か前に届いてようやく読んだ)
大正時代より令和まで、百年間の部の活動。
なによりも時代の変化にいちはやく対応している。
昭和の時代の大学山岳部って伝統遵守で、新しいことをなかなか受け入れない傾向があった。
たしかに明確な課題があるときは考え方を固めたほうが効率的だけれど、課題が見えなくなったとたん行き詰まる。
やはり発想の転換はだいじだ。
・冬の前穂高岳北尾根に1000メートルのロープをフィックス。
→安全が確保できれば技術や経験の不足をカバーできる。1、2年生も山頂に立つことが可能になる。
・シブリン北稜の難しい岩稜で難しい箇所では登山靴から運動靴(クライミングシューズが出まわっていないころは運動靴だった)に履き替える。
→雪さえ付いていなければヒマラヤだろうが冬壁だろうが、登山靴で登ることはない。安全かつ速さ。雪も氷も付着していないのに登山靴にアイゼンじゃないとダメ、と融通の効かない人が多い。
ほかにも昭和の時代は多くの大学山岳部で消極的だったフリークライミングや冬壁を積極的に取り入れ、難峰といわれるシブリン北稜(初登)やK7(初登)へとつながってゆく。
大学山岳部にかぎらずに行き詰まるときって、だいたい思考の凝り固まりが原因のようだ。
その凝り固まりから解き放たれるには、やっぱりめっちゃ頭を使う。
昨夜、読み終えた本。
『ナルコトラフィコ』(丸山ゴンザレス著)
麻薬カルテル(麻薬の製造、密売、売り買いを行う武装犯罪組織)のビジネスの仕組みと全体像を南米から中米を経て北米まで取材。
ときには密造潜水艦で麻薬を運ぶ。
丸山ゴンザレスは、裏社会ジャーナリストとして「クレイジージャーニー」に何度も出演している。
麻薬ビジネスの世界では、いつ死んでもおかしくないといわれている。
それを追う者は、さらに死の確率が高くならないか。
取材過程で死の不安をかんじないのか。
著者は、特徴ある容姿だから狙いやすい。
危機に瀕する場面は多々あるものの、文章は淡々としている。
(経験による対策は怠っていないけれど)
もしかしたら丸山ゴンザレスの死の不安をかんじる限界点は、すくなくともオイラのような凡人なんかよりも遥かに高いのではないだろうか。
昨夜、読み終えた本。
『虚ろな革命家たち 連合赤軍 森恒夫の足跡をたどって』(佐賀旭著)
連合赤軍最高幹部、榛名山の山岳アジトにおける同志殺害事件の主犯。
連合赤軍のほかのメンバーの永田洋子、坂口弘、植垣康博は獄中手記を出版している。
森恒夫は逮捕後に東京拘置所で自殺したので、詳細な軌跡を追った書籍がこれまでになかった。
ところで、なぜオイラがラディカルな思想の持ち主の書籍を選ぶのか。
暴力による革命の是非はさておき。
社会性云々をバッサリ切り捨てて己の理念にすべてを賭けた狂気に、どこか惹かれるからだ。
極限に対峙する志気は、一部の芸術家にも通づる。
オイラの登山も旅もどうあがいても、狂気の産物と揶揄される領域までは踏み込むことができなかった。
昨夜はThe Tribで小松由佳さんのトークイベント。
(K2(8611m)日本人女性初登頂。第23回開高健ノンフィクション賞受賞)
「K2から草原、砂漠へ。人間の土地へ」
これまであまり語られてこなかった登攀から旅へ、そして写真の世界に入ったはなし。
たしかにヒマラヤの氷壁登攀とアジアの遊牧民の暮らしはむすびつかない。
しかし登攀もアジアの旅もシリア内戦取材も、舞台が変わっただけで自身のなかでは好奇心の赴くままに未知の世界を歩きつづけているのだ。これからも歩きつづける。
1963年8月に谷川岳一ノ倉沢衝立岩のダイレクトカンテを初登した東京都立大学山岳部の川副博司のはなしを思い出した。
登攀は学生時代でひと区切りつけたのち、研究の分野にすすむ。
未知の領域への挑戦という意味では、岩場のルート開拓も最先端の研究も意識はおなじではないか。ただ取り組む問題が異なるだけだ、と。
昨夜読んだ本。
『親友は山に消えた』(小林元喜著)
山岳やアドベンチャー・レースのカメラマンとして活躍した平賀淳。
2022年、アラスカのデナリ国立公園で撮影中にクレバスに転落死。享年43。
この本は、平賀と幼なじみだった著者による人物ルポ。
平賀淳には一度だけ会ったことがある。
(某山麓で某番組の裏方をやったとき。班は別の班)
共通の知人がいることが会話のきっかけで、平賀が一方的にしゃべりまくった。
おそらく1分に満たなかったけれど、印象は強烈。
ヘンなヤツだった。
でも不快なかんじはない。アジアの安宿のドミトリーにたむろしていそうな、おもしろそうなヤツ。
見た目はそこそこインド人。
この本を読むにしたがって平賀が見えてきた。
・エピソードに事欠かない酒癖の悪さ。
・電話魔。
・計画性のない実行力。
そして、俺は俺にしかできない仕事をしたい、と。
あっ、やっぱり。おもろいヤツだったんだな、、
さてこの本のさいごに著者が平賀淳の転落したデナリの氷河に立つシーンは、感動的だった。泣ける(泣かなかったけど)。
大学山岳部が低迷化の時代といわれようが、登れる若手の大半がフリークライミングに向かおうが、部員減少で部員ひとりになろうが、冬の長い縦走をやる大学山岳部はあるのだな。
やる人って時代に関係ないのがおもしろい。
できなかった人が自身の情熱や実力のなさを自覚せず、時代のせいにするのはさらにおもしろい。