来週から厳冬カナダへ。
凍傷の後遺症で見通しすら立たない。勝算はまるでない
では、どうして懲りずに厳冬カナダへ行くのか? 旅立つ理由は3つある。
一つめは、ここ一年、傭兵・高部正樹の著書をよく読んだ。激しい銃撃戦でも、最後まで逃れることを潔とせず戦いつづける。どんなに辛くても苦しくても、決して逃げ道を探そうとしない。どんなに大きなリスクに直面しても、決して背中を見せない。その多くは、病に倒れ、銃弾を浴びて死ぬ。何にでも見返りだの理由づけだの求める今の世の中で、己の信念にまっすぐに生きた男たち。「義をもって死すとも不義をもって生きず」の生き様を知ってしまった以上、自分も行動を起こさないわけにはいかない。
二つめは、行動しているほうが精神的に楽だから。動きつづけていれば次々と不安定な状況を求める結果になる。辛い状況だが、何もせずに停滞しているときの焦燥感ほどの不快さはない。
三つめは、厳冬カナダの自然の魅力。雄大なスケールや厳しい自然や自由な土地柄など、星野道夫の著作を読めば魅了される。今冬は大事をとって他の国も検討した。しかし最終的には、やっぱり厳冬カナダになった。きっと相性なのかもしれない。今の自分のハンディを越えるほどの魅力を厳冬カナダは内包しているともいえる。
はっきりいって自分のやっていることに、その先がまったく見えない。自分が何を求めているのかも、いまだに思い描けない。
ただ、動き出さずにはいられないから行くだけである。とにかくリスクに背を向けず動き出すしかない。それが勝算のまるでない厳冬カナダへの旅立つ理由である。
厳冬カナダを前に、12月から6週連続で厳冬・富士山に通った。
足の凍傷の具合は思いのほか悪い。
少なくとも装備の改良や気力で乗り越えられる問題でないことはたしか。
先行きは真っ暗。。。
凍傷による退院いらい初めての冬山。
コンディションは厳冬季さながら。上空では一晩じゅう轟音が鳴りひびく。テントの両側布地がくっつくほどのバタバタ。
8合目くらいまでと思っていたが、山頂まで辿り着けたのは嬉しい。
しかし山から降りると凍傷跡の患部が薄い紫色に変色していた。。。
「CYCLE SPORTS」(八重洲出版、2008年12月号)に、「厳冬カナダ自転車旅」のタイトルで掲載。
自分の言いたいことが果たしてうまく伝わっただろうか。
自転車なんて漕げば進む。リスクも低い。
編集部よりのコメントは「過酷という言葉では語れないほどすさまじい旅」。
世の中もっとすごい世界たくさんあるのに。真摯に追求するアスリートに比べたら、自分のやっていることはしょせんその程度にすぎない。
ある意味で編集者の意図というよりも、昨今の保守的で主体性のない読者を反映してのコメントかな。。。