昨夜のThe Tribeでのトークイベント「長期間&長距離 登山家列伝 第5回目 風狂を尽くして 早稲田大学山岳部9年生、竹中昇」だよ。
今回のシリーズで竹中昇が、もっともなじみがうすいかもしれない。これまでの人たち――細貝栄、溝江朝臣、和田城志――は、山岳雑誌にインタビュー記事がある。大きな顔写真とプロのライターの文章があるかないかで、印象がちがってくる。竹中昇の雑誌の登場はない。
より厳しいルートから冬の剱岳・黒部を登るためのステップとしてヒマラヤ7000m峰に登るという発想、おもしろいじゃないか。
(かつては日本の山はヒマラヤのためのトレーニングという考え方が色濃かった)
精力的に難度の高い活動をしていても、自己顕示欲に乏しいと名前が出にくい。
誰かがとりあげないと、いつのまにかいなかったことになってしまう。
昨夜、読み終えた本。
『山を歩く、魂が還る』(矢作直樹著)
加齢により体力が低下したとき、どのようにして登山と関わっていけばいいのか。
ある年齢に達すれば誰もが直面する。
(ワシは六十歳過ぎてもピンピンしとるいう人って、もともと体力を使うような山に行っていない)
この本を読んでゆくと、体力の低下=(イコール)失うとはならないようだ。
肩の力を抜いて、はじめて見えてくる光景がある。
ゆっくり歩いてみて、はじめて気づくことがたくさんある。
もしかしたら、体力的に山が歩けなくなってからはじめて出会える世界というものもあるのかもしれない。
◇
それにしても無理のない歩みを意識して、これだけ歩けてしまうのはやはりスゴい。
著者の還暦以降の主な山行。
・2021年3月10日〜27日(18日間)、三伏峠〜小河内岳〜荒川岳〜赤石岳〜聖岳〜茶臼岳
・2022年3月12日〜22日(11日間)、三伏峠〜塩見岳〜仙塩尾根〜北岳
・2023年3月11日〜22日(12日間)、農鳥岳〜北岳〜仙塩尾根〜仙丈ヶ岳
・2025年3月17日〜4月10日(25日間)、光岳〜茶臼岳〜聖岳〜赤石岳〜荒川岳〜三伏峠〜塩見岳〜北岳
いずれも単独。
昨夜はThe Tribで小松由佳さんのトークイベント。
(K2(8611m)日本人女性初登頂。第23回開高健ノンフィクション賞受賞)
「K2から草原、砂漠へ。人間の土地へ」
これまであまり語られてこなかった登攀から旅へ、そして写真の世界に入ったはなし。
たしかにヒマラヤの氷壁登攀とアジアの遊牧民の暮らしはむすびつかない。
しかし登攀もアジアの旅もシリア内戦取材も、舞台が変わっただけで自身のなかでは好奇心の赴くままに未知の世界を歩きつづけているのだ。これからも歩きつづける。
1963年8月に谷川岳一ノ倉沢衝立岩のダイレクトカンテを初登した東京都立大学山岳部の川副博司のはなしを思い出した。
登攀は学生時代でひと区切りつけたのち、研究の分野にすすむ。
未知の領域への挑戦という意味では、岩場のルート開拓も最先端の研究も意識はおなじではないか。ただ取り組む問題が異なるだけだ、と。
昨夜読んだ本。
『親友は山に消えた』(小林元喜著)
山岳やアドベンチャー・レースのカメラマンとして活躍した平賀淳。
2022年、アラスカのデナリ国立公園で撮影中にクレバスに転落死。享年43。
この本は、平賀と幼なじみだった著者による人物ルポ。
平賀淳には一度だけ会ったことがある。
(某山麓で某番組の裏方をやったとき。班は別の班)
共通の知人がいることが会話のきっかけで、平賀が一方的にしゃべりまくった。
おそらく1分に満たなかったけれど、印象は強烈。
ヘンなヤツだった。
でも不快なかんじはない。アジアの安宿のドミトリーにたむろしていそうな、おもしろそうなヤツ。
見た目はそこそこインド人。
この本を読むにしたがって平賀が見えてきた。
・エピソードに事欠かない酒癖の悪さ。
・電話魔。
・計画性のない実行力。
そして、俺は俺にしかできない仕事をしたい、と。
あっ、やっぱり。おもろいヤツだったんだな、、
さてこの本のさいごに著者が平賀淳の転落したデナリの氷河に立つシーンは、感動的だった。泣ける(泣かなかったけど)。
昨夜のThe Tribeでのトークイベント「長期間&長距離 登山家列伝 第4回目 冬季黒部横断30回・剱の怪人 和田城志」だよ。
和田城志の第一線で活躍していた期間は長い。学生時代から四十代後半まで雪の剱岳や黒部、ヒマラヤの登攀を実践。五十代、六十代は長期(1〜3カ月)の歩き旅、七十代はヨット旅。
十代、二十代で「力のかぎり登ろうぜっ!」と熱く語る人はすくなくないけれど、5年、10年すると「オトナになりなよ、、」に変ってしまう。あらためて和田城志の持つエネルギーをかんじた。
また雪の剱・黒部の登攀史を編纂した実績もひじょうに大きい。先人の足跡があってこそ、現在の先鋭的なクライミングはある。
今回の告知文や雪の剱・黒部の記録整理の一部は、暖房の効いた図書館などではふさわしくないとおもい今季最強の寒波がやってきた青森のドカ雪のなかテントを張ってやった。