四十代前半から体力がガタ落ちした。
そういっても具体的に歩く速度が急激に遅くなったとか荷物がまるで担げなくなったとか、リアルに体感できることとはちがった。
毎冬似たような旅や山をやっていながら、四十代前半を境に凍傷やらケガやら故障が格段に増えた。
裏を返せば、体力のガタ落ちが原因に思われる。
いっぽうで四十代前半を境に、自分のやってきた旅や山が変化してきた。
それまではどこどこまで到達するといった地理的な、つまり対外的な意味での場所がゴールだった。
四十代前半からは自身のなかでひとつの節目と感じる地点、つまり内面的な意味で納得のゆく地点がゴールとなった。
どちらが大変かと訊かれても、それぞれちがった意味で大変だ。
どちらが楽しいかと訊かれても、それぞれに味わいがある。
いまふり返ってみるとあえて意識したわけではない。
なんとなくそんなふうに流れていった。
ただひとつ言えるのはやはり四十代前半で体力がガタ落ちした時点で旅や山における価値基準を変換していったからこそ、五十代半ばのいまでも旅や山を継続できているのではないかと思う。
ここ数年やっていることが地理的な意味でいったら毎回敗退どころか惨敗つづきだけれど、自身のなかではなかなか楽しめているし手応えすら感じている。
ただどこへ行きましたかとかどこを登りましたかといった対外的な成果だけに興味を示す人とは、ますます会話が成り立たなくなってきているのはたしかだ(笑)