昨夜読んだ本。
『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(羽根田治、飯田肇、金田正樹、山本正嘉著)
2009年夏に北海道の大雪山系のトムラウシ山で起きた夏山登山史上最悪の遭難事故。
18人グループのうち8人が死亡。
ツアー登山の実態というか背景を見ると、起こるべくして起きたともいえる。
山のことまるでわかっちょらんツアー会社、山のことまるでわかっちょらんツアー会社の管理職クソ・オヤジ、山は好きだけど山の実力も経験もほとんどないチンチクリン系クソ・ガイド、想定内のことは完璧にこなすけど想定外の事態に遭遇するとパニクって捨て駒にも使えないチンコ野郎系クソ・ガイド。
状況を分析するとハッキリ言って先鋭クライマーのフリーソロや極地冒険のソロより格段に死ぬ確率は高い。
この事故が起きる前からツアー登山のリスクに関しては、しょっちゅう話題になっていた。
でも中途ハンパな経験者やちっぽけな成功体験をもつ者ほど、頭コチコチで他者の意見をなかなか受け入れない。
この事故で亡くなった登山者やまわりの人にこんなこと言ったら失礼きわまりないけれど、もしこの事故が起きなければツアー会社もガイドも爆走してさらに大きな遭難事故が起きていたと言えなくもない。
敗れて目ざめる。
三度の飯より山が好きです!
そういってる人ほど、山での飯が粉になったカロリーメイトだったりすると嫌な顔をする。
きのう読んだ本。
『黒部の山賊』(伊藤正一著)
終戦直後に北アルプスの黒部源流の三俣山荘にたむろしていた四人の猟師のはなし。
彼らの卓越した技能には驚かされる。
昔の猟師の体力、とりわけ脚力に関してはさまざまな書物や資料で確認されている。
昨今の自称・山のベテランが数日費やすところを軽く1日で駆け抜ける。
それよりも終戦直後の乏しい情報量と乏しい装備であれだけの日数を険しい山に入っていて、大きな事故に見舞われていない。
いわゆる下界というか都市部に暮らす人たちよりも桁違いに膨大な知識や法則、知恵が猟師たちの頭には詰まっているのではないだろうか。
あくまでも推測に過ぎないけれど、体力だけでは理不尽の集合帯ともいえる自然の猛威のなかで生きのびることはむずかしいとおもう。
ちなみにこのあたりはこれまでに何度も訪れているけれど、この本を読んだあとに再訪したらおそらくこれまでとはちがった光景が見えてきそうだ。
伊藤正一写真展「源流の記憶 黒部の山賊と開拓時代」に行ってきたよ。
それにしてもすさまじい歩荷力。
どうみても100キロはありそうだし、バランスはめっちゃ悪そう。
登山道だって今みたいに整備されてないし、装備だって今みたいにしっかりしてない。
今の時代に換算したら果たしてどのくらいのことになるのだろうか。
こういうのをみてしまうと、わたしはザックを担いで山を歩いたことあります、なんて言いづらくなってしまう。
ザックが身体にフィットしませんとか濡れた丸太は滑って歩きにくいなんて言ってられねえぞ。
恐るべし先人たちの足跡。