カナダ中央平原北部踏破の計画は中止した。 計画は中止したけれど、それなりに感慨深い旅だった。まずは、順を追って説明したい。2月上旬、カナダ中央平原北部入り。ところが現地は暖冬だった。2月の最低気温マイナス36℃。彼の地ではマイナス40℃を下まわらないと冬季とはいいがたい。甘っちょろい条件下で踏破しても価値はない。 もちろん暖冬でも極寒の地ゆえに、それなりの苦労はあろう。でも、大変だなどといって欲しくないていどの大変さ(キリマンジャロ登頂や日本三百名山達成ていどの)でしかない。金と暇とわずかな努力で解決できるのは挑戦ではなく暇つぶし。 いずれにしても、厳しい条件下での踏破という当初の目的は実現できない。潔く、中止決定!! * じゃあ、今回の旅は成果がなかったのか? そんなことはない。たしかに踏破は中止した。でも、少しだけ出かけてみよう、と訪れた先住民の村はよかった。村はずれにテントを張ってしばらく滞在。 朝になると誰かしらがやってくる。「寒くないか?」「コーヒー飲みに家へ来ないか?」。はにかんだ笑顔がやさしい。アイス・フィッシングにも連れて行ってくれた。 カナダ中央平原の土地もまたいい。大雪原に沈む夕日は圧巻だ。雪原のむこうに夕日が重なるころ、逆光に照らされた雪面がうすいオレンジ色に輝きはじめる。遠くの針葉樹林の一本一本が黒いシルエットになる。自然と闘い自己に打ち勝つ挑戦とは対極の、もう一つの魅力がそこにはあった。 これまでにもカナダ中央平原では、先住民とは何回も交流している。同じ光景だって何度も見ている。しかし、目的が達せられなかったからこそ、その土地と人の魅力がよりいっそう見えてきた。。。