旅先の土地の人たちとの交流についてもよく訊かれる。 日ごろから愛想などという表情とはほど遠いほうだ。 たいていの人とは目も合せないのに、いったいどのようなタイミングで人と知り合っていくのか、ともよく訊かれる。 結論から言うと、自分から話しかけることはきわめてすくない。 自分のやっていることを説明するには、日本語でもかなり骨が折れる。 それでも旅行者の少ないエリアでは、めずらしがられるのか頻繁に土地の人から話しかけられる。 誰かに話しかけられても、ぶっきらぼうに突き放すようにしか答えない。 当然相手も怪訝そうな表情になるが、そうしたなかでただひとつ好印象をもたれる会話のやりとりがある。 「ところでどうしてこんなマイナーな場所を旅しているんだ? そもそもどうしてこんな場所を知ってるんだ?」 「まず雄大な自然に魅かれてカナダを選んだんだよ。そのなかでもこのエリアは、手つかずの自然が残されていてたいへん気に入っている。ここで眺める夕日はサイコーだ。もう3冬も訪れているよ」 その土地の魅力を褒めると、ほぼまちがいなくその土地の人はよろこんでくれる。 ぶっきらぼうだった会話が、いつしか大歓迎になってしまったりする。 「寒いからウチにコーヒーでも飲みにこないか? 夕食を食べにこないか?」 それからはもう芋ずる式に知り合いを紹介されてゆく。 あとで知ったことだが、一般的にマイナーなエリアほどその土地を褒めるとひじょうによろこんでもらえるようだ。