書評を書いたよ。
『アート・オブ・フリーダム』(恩田真砂美・訳)
ヴォイテク・クルティカといえば、おそらくどんな先鋭クライマーにとっても雲の上の存在である。
じゃあ、一般的な登山者が読んだところでぜんぜん参考にならねえじゃん。
ところがクルティカは哲学者でもある。
この本にはハードな登山やクライミングに縁がうすい人たちにとっても、人生訓になるようなコトバがたくさん散りばめられている。
映画評を書いた。
『残された者 ―北の極地―』
いわゆる遭難もの。
映画はぜんぜん観ないし、映画のことはさっぱりわからない。
映画評も読んだことがない。
でも長期間にわたって隔絶された場所を歩いたことは何度もある。
通信機器を持たずに隔絶された場所で、骨折したり酷い凍傷は何度もある。
自分がほんとうに追いつめられたとき、どう対処すればいいのか。
どうにもならなくなったときに最後のさいごは、潔く自死するしかないのだろうか。
理不尽の集合帯のような状況下で、果たして正解を見いだすことができるのだろうか。
そもそも正解など存在するのだろうか。
今回の映画評を通してこれまで頭のなかでもやもやしていたことが、いろいろと整理できた気がする。
11月8日金曜日に公開。
http://www.arctic-movie.jp/
経験がないほど知識も技術もないほど、大胆に行動できる。
でも経験がないほど知識も技術もないほど、事故りやすいし死ぬ確率は高い。
経験が増えるほど知識や技術が増えるほど、大胆な行動ができなくなる。
人はオトナになるほど弱くなる。
それら両者の境界線が、その人の頂点になる。
登山の技術や知識をこと細かに訊いてくる輩ほど、体力がぜんぜんねえ。
小手先のテクニックよりまずは体力がないと、技術も知識も生かされねえ。
登山靴の性能にやたらうるせえ輩って、たいていサンダルでも行けるような山しか行かねえ(笑)
一昨日読み終えた本。
『ザ・プッシュ ヨセミテ エル・キャピタンに懸けたクライマーの軌跡』(トミー・コードウェル著、堀内瑛司・訳)
高差1000メートルちかい、傾斜が強く、ホールドがほとんどないエル・キャピタンのルート――ドーン・ウォール――をオールフリーで登ったクライマーの自伝。
エル・キャピタンだのドーン・ウォールだのオールフリーだのいうても、一部のクライマーを除けばやはりピンとこないだろう。
強いて噛み砕いて例えるなら、世界で数指に入る宮大工の職人技とでもいったらいいのだろうか。
度を過ぎたスゴさは、一般大衆にとってかえってぼやけてしまう。
まあ一般大衆がピンとくるのは、ほどほどにスゴいとこまでともいえる(笑)
この本のあらすじも解説も感想もすでに何人かのクライマーがSNSに載せているし、山岳雑誌にもすばらしい書評が掲載されとるから、ここでは割愛する。