今週読んだ本。 『天路の旅人』(沢木耕太郎著) 戦中戦後にかけて8年間、内モンゴル~青海省~チベット~インドを密偵と巡礼をした西川一三を追ったルポ。 自由な人だなぁ、って思った。 密偵や巡礼が、ではない。 日本に帰国して数年かけて『秘境西域八年の潜行』を書き終えると、いつまでも「チベットの西川です」などと引きずらず、あとは晩年まで東北の盛岡で化粧品店の店主としてコツコツと働くという道をたどる。 自由とはフリーランスやアウトローや流浪の旅人になるだけではない。 必要以上に過去の業績にとらわれることなく、どの方向にもすすめることこそが自由だともいえる。 この本を読むとわかるけれど、この主人公の西川一三は表舞台よりもむしろ地味に暮らすほうが居心地が良かったのではないだろうか。 せっかくあれだけのことを成し遂げたのだからもっと社会に還元したいもっと有名にならないともったいない、といった欲はときに枷(かせ)にもなり得る。