昨夜、やっと読み終えた本。 『漂流』(角幡唯介著) 1994年に漁船が沈没して救命イカダで37日間漂流。 フィリピンのミンダナオ島で発見されるも、8年後にふたたび海に出たままいまだに行方不明。 二度も行方不明となったひとりのマグロ漁師の生きざまを追ったルポ。 400ページを越える。 マグロ漁が金になったのはもう過去の話、みたいな水産業界の説明はめんどくさいから読み飛ばす。 興味をひかれたのはこの漁師の世界観、というよりも死生観。 少なくとも一般大衆にくらべれば、死というものが日常にきわめて密接している。 死の捉え方が超越している。 「海に生きる」とは、死をもふくめたリスクをしぜんに受け入れることなのではないだろうか。 この漁師の生きざまにここまで迫れたのは、この本の著者が言葉だけで処理する頭でっかちんノンフィクション作家ではなく、自身もしばしばプチ行方不明にすらなる実体験型ノンフィクション作家だからであろう。