風雪の津軽のテントのなかで読んだ本。 『春に散る 』(沢木耕太郎著) ボクシングには縁がないどころか、ボクシングをテーマにした本を手にするのもはじめて。 それでも上下巻900頁余を一気に読んだ。 ストイックなボクサーの生きざまを描いた小説。 試合で殴られまくり、失明の危惧にさらされながらも、前へ前へ。 いったいなぜ、そこまで。 光を失う恐怖はないのか。 そもそも何をめざしているのだろう。 世界チャンピオン獲得といった名声ではなく、内面的な世界を模索しているのか。 でも、見えなくなってもいいんです。この眼は、あの試合で、見たいものを見ましたから。 もしかしたら何かを失ってみじめに見えるようでいて、じつは何かを獲得して静かに満たされているのかもしれない。 完全燃焼という言葉は、すがすがしい。そして、おそろしくもある。