すこし前に読んだ本。 『リヤカー引いてアフリカ縦断』(吉田正仁著) たとえばどこでもいいから国道を1日40キロ歩いてみる。 できれば真夏日とかを選んでやってみる。 おそらく何割かの人は歩きはじめてすぐにギブアップするだろうし、何割かの人は歩けてもそれだけでお腹いっぱいになるだろう。 翌日もまたおなじことをやろうという体力と気力が残っている人はきわめて少ないだろう。 そんなふうにイメージしてみるとこの本の旅の厳しさがつかめる。 エジプト、スーダン、エチオピア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ・ボツワナ、南アフリカ。 アフリカ大陸を北から南へ歩いて縦断。 所要316日、距離1万1000キロ。 気温プラス50度、暑さよりも鬱陶しくつきまとう現地の人、そして強盗。 旅は艱難辛苦の連続たけれど、文章は思いのほかあっさりしている。 水平の旅の紀行にありがちなやたら興奮しすぎているシーンがさしてない。 なんでやねん。 必要以上に他者に認めてもらいたいという欲求がないからないのかもしれない。 この著者は自分らしい旅を淡々とつづけてゆく。 だから旅の終わり方もあっさりしている。 ひとつが終ってもすぐに次が見えてくる人は必然的にそうなるのかもしれない。 ひたすら目指してきた喜望峰は、辿り着いた瞬間に目的地から通過点へと変わっていった。