高校1年の夏、ひとりで剱岳に行った。 計画は八ツ峰、源次郎尾根、そして池ノ谷の剱尾根。 結果は、八ツ峰と源次郎尾根は登った。 いずれもルートをかなりまちがえて落ちるか落ちないかの場面があったけれど。 そのあと気合いの入った台風直撃で、剱尾根は行かなかった。 もしここで落ちたら数百メートル下に叩きつけられて頭なんかもげるだろう。 なんてことは考えもしなかった。 経験も知識もなかったあのころは、頭のなかでイメージする世界がひろくて可能性に満ちていた。 経験も知識もなかったころの自分は強かった。 四十年以上むかしの夏の思い出。